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エンドファイトとイネ科植物の相互作用

エンドファイトと植物の共生関係

 植物病原菌は、植物内に侵入し栄養を摂取し植物を枯死させたり、生育を著しく害します。しかし自然界には植物に感染したのち、植物と共存する微生物がいます。このような微生物のうち、植物体内で共存的に生活している糸状菌や細菌などはエンドファイトと総称されています。エンドファイトはその感染によって植物にとって有益な効果(耐虫性、耐乾性、耐病性などの向上)をもたらすものが報告されており、植物保護に活用できる可能性が考えられています。 糸状菌であるEpichloaeエンドファイトは、 宿主である牧草ペレニアルライグラスの細胞間隙で生育し共生関係を保っており、耐虫性物質を生産することから、主にアメリカやニュージーランドの牧草で利用されています。

 Epichloëエンドファイトの感染によって、宿主植物の病原菌に対する抵抗性が向上すると報告されています。しかし、そのメカニズムはあまり解明されていません。多数のエンドファイト菌株を調べたところ、病原菌に対して高い抗菌性を持つ菌株が得られました。この菌株が感染した植物は病原菌に対する抵抗性が向上したことから、エンドファイトが産生する抗菌物質は自らの宿主を守る役割を持っていることが示唆されています。これまでに、このエンドファイトの産生する抗菌物質の生産を制御する遺伝子の発現を活性化する因子を見出し、抗菌性が向上したエンドファイトを作出することに成功しています。現在、エンドファイトが産生する様々な抗菌物質の有効活用を目指して、抗菌物質の単離と生合成に関与する遺伝子群の単離に取り組んでいます。

Epichloëエンドファイトの産生する抗菌物質

Epichloëエンドファイトの共生確立機構

 Epichloëエンドファイトは、宿主である牧草ペレニアルライグラスの細胞間隙で生育し共生関係を保っています。植物との共生関係を保てないエンドファイト変異体の研究から、エンドファイトによる活性酸素の生成が共生確立に不可欠であることが明らかとなりました。宿主植物内で活性酸素を生成できない変異体は、植物内で過剰に生育し、やがて植物を殺してしまいます。このことは活性酸素生成がエンドファイトの宿主植物内での生育の制御をしていることを示しています。一方、近年では植物病原菌の植物への感染においても、活性酸素生成遺伝子が必要であることが分かってきました。このことは、同じ遺伝子を病原菌と共生菌が異なった使い方をしていることを示唆しており、植物-病原菌相互作用と植物-共生菌相互作用の進化を考える上で興味深い結果だと言えます。

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